シネフィル気取りのカスがお送りします

そのへんに掃いて捨てるほどいるシネフィル気取りのカスによるブン学、オン楽、映画のはなしなど

≪和訳≫hallelujah (I don’t think about you)/Kevin Olusola

どうも、諸々の史的イエス本とリチャードドーキンス本を読んで完全に無神論者に改宗しましたwysha です。

最近このヘンデルのやつサンプリングした本曲に出会ったんですけど、

 

ケヴィン・オルソラ天才すぎない?

あとこれ

クリスチャンから無神論者に鞍替えした俺たちのアンセムすぎない?

 

と思ったので和訳してみました。

 

You used to be my sweetest song (hallelujah)

Turns out the autotune was on (hallelujah)

You used to be my northern lights (hallelujah)

Turns out, it was just CGI

 

Once upon a stupid time

You lived rent-free inside my stupid mind

Thought without you, I would die

So funny how since you've been gone, I'm singing hallelujah

 

(Hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

I'm singing hallelujah, I don't think about you (Hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

I'm singing hallelujah, I don't think about you (hallelujah)

 

This freedom look too good on me (hallelujah)

I be one, two stepping down the street (hallelujah)

And where I'm headed, I don't know (hallelujah)

But you won't be there, that's for sure (hallelujah)

 

I'm having a ball, who knew l'd get to the top from a fall (yeah, yeah)

I'm high as a kite, don't even smoke, but I'm taking off flight

Father, You hear me, like, "Where did you go?"

Wait, never mind, you were just saving my soul

I low-key lost hope, but now my energy, energy (energy, energy)

Flows, flows

You already know

So funny how since you've been gone, I'm singing hallelujah

(Hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

Im singing hallelujah, I don't think about you (Hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

I'm singing hallelujah, I don't think about you (hallelujah)

 

My life is so sweet (yeah, my life is so sweet)

Summer sippin' iced tea (summer sippin' iced tea)

My favorite record's on repeat (hallelujah, hallelujah)

'Cause yeah, yeah, hallelujah, I don't think about you

 

Eh-oh, I'm not thinking 'bout you

Now a second on you

Oh, I'm not thinking 'bout you

So funny how since you've been gone, I'm singin' hallelujah

Yeah (hallelujah, hallelujah, hallelujah,

 

Yeah (hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

Oh, yeah-yeah-yeah

Hallelujah, I don't think about you (Hallelujah, hallelujah, hallelujah, hallelujah)

Hallelujah, yeah-yeah-yeah

I'm singing hallelujah, I don't think about you

 

My life's so sweet (yeah, my life is so sweet)

Summer sipping iced tea (summer sipping iced tea)

My favorite record's on the key

Whoa, no, no, no

'Cause yeah-yeah, hallelujah, I don't think about

 

あなたは俺にとって一番素敵な歌だったんだけど

なんのことはない、オートチューン*がかかってたんだよね

あなたのことオーロラだと思ってたんだけど

本当はCGだった

 

むかしむかし、ある浅はかだった時代に

あなたは俺のばかな心の中に家賃も払わずに住んでた

いつもあなたが心の中にいたから、あなた抜きで何かを考えたりしたら死んじゃうと思ってたな

 

だからあなたが俺の心から出て行って以来、本当に心から「ハレルヤ」って喜び歌えてるってことが笑える(笑)

 

ハーレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!

今、心から「ハレルヤ!」って喜び歌うよ

もうあなたのことは考えない!

 

この自由はちょっと最高だな

どこに向かってるかわからないまま、

一歩ずつ通りを歩いてく

でも俺が向かう方にあなたがいないことだけは確かだよ

 

今メチャクチャ楽しんでるんだよ

まさかおれが谷底からてっぺんまで這い上がって来れるなんて誰も思ってなかったよね?

ハッパも吸ってないのに凧みたいにハイだよ

なのにさらに高みに離陸しちゃいそう!

 

“愛する天のお父様”、俺が「あなたはどこに行ってしまったんですか?」って問いかけるのが聞こえるかもしれないけど、おっと、今のは気にしないで。

あなたは俺の魂を救おうとしてたんだよね

俺はまああなたたちが言うところの地味めの「失われた希望」かもしれないけど

今、俺のエネルギーが溢れ出してるのわかるでしょ?

 

だからあなたが俺の心から出て行って以来、本当に心から「ハレルヤ」って喜び歌えてるってことが笑える(笑)

 

ハーレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!

今、心から「ハレルヤ!」って喜び歌うよ

もうあなたのことは考えない!

 

俺の人生は夏に飲むアイスティーみたいに甘くて美味しいよ

俺の好きなレコードをエンドレスでかけて

もうあなたのことは考えない!

 

ちょっと時間がいるかな?

あっ、こっちはもうあなたのことは考えてないから大丈夫だよ

 

だからあなたが俺の心から出て行って以来、本当に心から「ハレルヤ」って喜び歌えてるってことが笑える(笑)

 

ハーレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!ハレルヤ!

今、心から「ハレルヤ!」って喜び歌うよ

もうあなたのことは考えない!

 

俺の人生は夏に飲むアイスティーみたいに甘くて美味しいよ

俺の好きなレコードをエンドレスでかけて

もうあなたのことは考えない!

 

*音程補正ソフト(音程が外れていても補正することで歌が上手く聞こえる)

イエスの言動を「あわれみ」から真摯に読み解く/キリスト教以前のイエス

名著!!!

古い本ですが緻密なテクスト分析をもとに平易な言葉で史的なイエス像を読者に提示してくれる本です。

 

「イエス様を何よりも一番に愛さないといけない」とかは教会でよく聞くキーワードだけど、教会の中でなされる語りを聞いても実際「本当にそうなん?」と思っていました。だって会ったこともなければ見たこともない人のこと、人生で出会った他の何者よりも愛せるって本当にそう思う?私は思いません…。人が人を愛するってのはその人のことを直に見知っていて人格的に尊敬していたり、その人が自分に何か良いことをしてくれてそれが嬉しいからであって、物語の中のイエスは現実世界で自分に何も嬉しいことしてくれないのに、他の何よりも愛するってむりじゃん?と思います。まあハリーポッターを他の何者よりもめちゃくちゃ熱烈に愛してる人とかは確かにいるし、そういう意味では不可能ではないとは思います。二次元の推しとかみたいな感じでイエス愛する人も多分いるかなあと思いますが…。聖書だけを読んでイエスを推しにするのはちょっと厳しいかな。

 

メッセージの中では「私は妻よりもイエス様を愛してますけども……」とか牧師が言ってるのも聞いたことあるけど、それって信徒には違和感あるし無理な相談だよな……と思ったし…。でも本書を読むと教会で何となく違和感あったこともなるほど!!そうなんよな〜!!そういう文脈で捉えるならわかる!!と思わせてくれます。

 

特に衝撃的だったのは以下のポイントです。

①イエスは「中流階級」出身だった

②イエスのいう「神の国」は死後の国とは何も関係ない

③パンと魚が増えた例のエピソードの凄さ

 

①イエスは「中流階級」出身だった

教会の中では「イエス様は神様なのに、人となって生まれてくださった」という語りが主流だと思うんですが、それって一見、高貴なご身分であるはずのイエス自身が、彼が救済対象とした「小さき人々」の一員に「あえて自らを低くして生まれてくださった」ように感じさせるものだと思うんですね。赤ちゃんなのに(笑)!(実際今まで一般信徒としてそう思ってた)。

しかし!!「小さき人々」「罪びと」とは障害者(=物乞いで生計を立てるしかない)や罪深い職業の人(収税人、娼婦)等、ある特定の(最下層の)社会階層のことであって、イエスそれとは異なるまともな職業についてまともな収入を得ているちゃんとした市民階級(中流階級)!!しかもどちらかというと社会階層的にはパリサイ人と一緒のところにいた、というのが衝撃的でした。そして、当時の社会ではそういった社会階層を超えたつきあいはタブー。同じ釜の飯を食うなんてもってのほか。だからパリサイ派の人たちが「なんでそういう人たちと交わって飯食うんだ!!」って糾弾するわけですね。やっとわかったわ。ていうか「イエス様は神様なのに人になって生まれてくださったんです…」とか言う前にうちらまず最初にそこまで丁寧に説明して欲しいんよ!!

 

② イエスのいう「神の国」は死後の国とは何も関係ない

キリスト教の教義って「イエス様を信じたら、死後天国に入れます」っていうのが結構ウエイトでかいと思うんですよね。そして教会での説教では、福音書に書かれている「神の国」の意味をそういう死後の世界として語る事が多いと思うんですけど、エスが意味してる「神の国」はそういうことではないというのが本書が行なっている重要な指摘です。

当時の死生観としては、死んだ人はみんな「シェオル(よみ)」に行くわけで、エスもそういう死生観を持っていたようです

エスが言ってる「神の国」というのはこの地上で「神の価値観が実現するところ」、つまり「今(経済的に)貧しい者、(貧しいがゆえに)飢えている者、(差別されて)泣いている者が、抑圧から解放されているところ」を指すのです。

だから、「神の国は貧しい人たちのもの」で、「神の国を第一に求めなさい」なんです。それは、「もはや誰も抑圧されない社会を第一に求めなさい」と同義です。マタイは初期キリスト教徒が差別され殺される現実の中でやむを得ずそこを「死後の世界」と理解して、その理解が時を経て主流になってしまったわけですけど、イエスの弟子であるならば、キリスト教徒だけが入れる死後の国を第一に求めなさい」じゃなくて、「もはや誰も抑圧されない社会を第一に求めなさい」ということに聞き従い、そういう社会をつくることに尽力すべきなんですよ。

 

マタイ(という名前に今の所一応なってる福音書記者)もキリスト教徒が迫害されてる現実を前にしてやむにやまれぬ動機があって「神の国」を死後の国と解釈して福音書に書いちゃったと思うし、別にマタイだけを責めるわけじゃない(ちょっと責めてはいる)んですけど、もはや2000年の時を経て捻じ曲がっとるよ!!キリスト教の教義!!

 

③パンと魚が増えた例のエピソードの凄さ

エスが奇跡を起こすエピソードは色々ありますが、わりと有名なのが「5つのパンと2匹の魚で大勢の群衆を満腹させた」やつですね。伝統的にこれは「増殖の奇跡」と理解されてきましたが、本書ではこれを「顕著な分かち合いの事例」として捉えます。

もう引用した方が早いので引用します。

 

エスは人里離れたところで、集まった多くの男たちに宣教していた。食べるためにしばらく中断する時間になった。まぎれもなくある人たちは食べ物を持ってきていたが、持ってこなかった人たちもいた。

エスと弟子たちはパンを五つと魚を二匹を持っていたが、弟子たちは、人々を解散させて「自分たちで何か食べ物を買いに行く」よう告げたらどうかと提案した。イエスはそれを退けて、「あなたたちが自分でこの人々に何か食べ物を与えなさい」と言う。弟子たちは抗議するが、イエスは人々に五〇の組に分かれて座るように指示して、パンと魚を取り、弟子たちに「これを分け与えなさい」と言う。

ここで、エスが食べ物を持ってきていた他の人々にも、それぞれ五〇人の組の中で同じことをするように言ったか、あるいは彼らが、イエスと弟子たちが食べ物を分かち与えるのを見て、自発的に自分たちの食べ物篭をあけて中のものを分かち与えはじめたか、どちらかであろう。

この「奇跡」は、きわめて多くの男たちが自分の食べ物を所有するのを突然やめて、それを分かち与えはじめたことであり、その結果として皆に十分ゆき渡ってなお余りが出たのがわかったことである。余った残り物が一二篭もあったと述べられている。ものは分かち合われるとき、確かに往々にして「増殖する」のである。

 

A・ノーラン『キリスト教以前のイエス』p.80〜84

 

いや、今まで思ってたよりとんでもなくすごい「奇跡」じゃない!?

なんかよくわからん不思議な力でパンの体積がブワーって増えたって言われても私たちにはその出来事の意味は理解不能だけど、「きわめて多くの男たちが自分の食べ物を所有するのを突然やめて、それを分かち与えはじめた」ことの凄さは私たちの人生にとって、遥かに意義深い意味をもって迫ってくると思うのです。

エスは、物理法則に反するようなスゴい事ができるから神なのではないわけです。「物理法則を無視したタイプの奇跡を起こせる」ということをイエスの神性の補強にするのはナンセンスだなーと思いました(実際起こしてないわけだし)。イエス様はパン増やせるからすごいんだよ!水をワインに変えられるんだよ!水の上も歩けるから神様なんだよ!こんな事人間にはできないでしょ!だから神様だよ!って言われても「…うん…?そっかな…?」じゃないですか。

 

もっと言うと本書では処女懐胎とか(肉体的な)復活とかどうでも良いことは見事にスルーしてるのがいいですね。

私たちは処女懐胎とか水の上を歩くとか天使とか水をワインに変えるとかそういう信じがたいことを実際に起こった事実として受け止める必要はないし、それを鵜呑みにして無理やり信じ込むことはキリスト教信仰の核心ではないわけです。それは単なる知性の放棄なわけ。本書の姿勢からはそれをビシビシ感じられてすごい安心した〜。

 

で、さらに本書のすごいところは史的イエス像を緻密に浮かび上がらせていった後、「イエスには神性がある」というところに見事に回収してるところ。

エスの言った価値観(今抑圧されている者たちは解放されるという信仰)はまさに神の価値観であり、イエスの神への解釈はまさに神の求める解釈だったと言う意味で神だ、ということ。そういう意味だったらわかる!!

ていうか福音書記者(特にマタイ)がイエスの神性を補強するために処女懐胎とかをつけ加えたのが逆にいけないんよ!(笑笑)

 

いやーほんと良い本です。人間として生き、発言し、行動し、そして死んでいったイエスのかっこよさがめちゃくちゃ迫ってきます!書かれたのは昔だけど中身は全く古びてない。読みましょう。

天国の容赦ない光/地獄とは神の不在なり

奇跡と災禍が「天使の降臨」というダイレクトな形で神から齎される世界、というのがすごい着想。あと人が死んだ時に天国に行ったか地獄に行ったかが他の人の目で見てすぐわかるという設定も面白い。脱帽…。愛する妻セイラを「天使の降臨」による災禍で失った主人公ニックが自分とかなり重なるところがあり、非常に面白く読めました。

 

本作の世界では神がなぜ彼女を人生の途中で奪ったのかは何の理由もないけれど、彼女は神のせいで奪われた、ということが明確なんですよね。私たちが生きてる世界との決定的な違い、この話のSF的キモはここにあります。私たちは人生に起こる様々な出来事が神の意思によるのかどうか全く知りようがないわけです。それこそ地震なんかの自然災害による身近な人の死なんかはその最たるものでしょう。たとえば東日本大震災が神による制裁だという認識をはっきり持ってる人ってそんなにいないと思います。だって不条理すぎるもの。「この出来事が神の意志かどうかわからない」ということが前提にあるから、神を責めない、という選択肢を取れるのです。それは、不条理なことが起こった時に、「これは神の意図しないなんかしょうがないこと」と捉えることでもあるでしょう。(そうすることで、神が万物を支配してる、という全能性は成り立たなくなってくるのですが…)

 

ニックの生きてる世界では、妻の死が神のせいだ、ということは他のあらゆる(神の関与しないと思われる)現実と同列で明白です。

そして、彼女と再び一緒になるとはつまり天国に行く事で、そのためには神を心から愛するしかない。でもその神は、彼女を奪った張本人であって…凄まじい「汝の敵を愛せよ」ですよね。それを端的に書いてる箇所があるので引用します。

 

セイラの死を目覚めの呼び声として見なすことも可能だった。まだ自分にそのチャンスがあるうちに神を愛せよと告げるものである、と。

そうはならず、ニールは神に積極的に腹を立てるようになった。セイラは人生における最大の祝福だったのに神が彼女を連れ去ったのだ。そのせいで神を愛するようにおれがなると期待しているのか?ニールにとって、誘拐犯が妻の身代金代わりに愛を要求しているようなものだった。どうにか服従することは可能かもしれないが、真正の、心からの愛情だと?それはとうてい払えぬ身代金だった。

 

これホントそうなんですよね。私にひどいことしておいて、なぜ私があなたを愛するようになると期待できるのか?

 

翻って、現実世界で起こる事を全て「神が万物を支配してるのだから、神の意志で起こってるんだ」と捉えようとする向きもあると思います。(そういう人たちって、本当に一貫性を保とうとするとそれはそれで辛い人生観だと思いますが…)

 

身近な(クリスチャン同士の)人の死に際して信仰が慰めになった(=天国でまた会えるという希望を持てた)、という人はいるでしょうが、信仰の違いゆえに、自分はもういなくなってしまった愛する人とは違うところに行くかもしれない、という恐れと真剣に向き合ったことのある人ってそんなに多くないのではないでしょうか?そして、どうしても(クリスチャン的な天国に行かなかったであろう)愛する人と死後の世界でも一緒にいたい時はどうすればいいのでしょうか?そういう人にキリスト教がオファーできる救済って一体何でしょうか?

この一年ぐらいそういうことを考えて生きてたので、(立場は逆ではありますが)ニックのこの感情がめちゃくちゃ刺さりました。

 

ニックは妻と一緒にいたいがために七転八倒して一生懸命天国に入ろうとするのですが、私はニックとは逆で、どうにかして地獄に行けるようになりたいと思ってます。本作の中でヒントになったのが、天使の降臨によって被害を受け、神に怒りを抱いている人たちの互助グループのくだりに出てくる「ヒューマニスト運動」の考え方です。

 

運動のメンバーたちは苦しみをもたらす神を愛することは過ちであると考え、飴と笞に導かれる代わりに、人はおのれの道徳心に従って行動すべきであると提唱していた。彼らは、死んだ際に、神を誇り高く無視して、地獄に落ちていく人人だった。(原文ママ)

 

やっぱそこだよなあと思いました。一周回って「おのれの道徳心に従って行動すべき」になるよなあと。

クリスチャンって、往々にして「自分勝手な悟り」よりも人間には理解し得ない「神の義」を優先することを教えられますが、最近の人生経験を経て「やっぱり自分自身の良心を持って自分でちゃんと考えなきゃな」と思いました。だってもうレビ記とか完全に、生活で実践可能な倫理規範ではなくなってるもんね。良心とか倫理観を聖書にアウトソースするのって相当危険よ。

最終的にニックは天国行きの裏技がキマッたのに地獄に落とされる、という容赦ない運命に襲われるのですが、これもまた現実(を神の意志として知覚すること)のままならなさを描いていて良いです。テッド・チャンはこの話を書いた理由を「ヨブ記で最後にヨブに報いが与えられる(試練に遭う前よりも財産が増し加わり、子供にも恵まれる)ことに納得できなかったから」と述べていますが、どうしようもない現実に対して人間が必死で自分の持てる全てを振り絞って考えて、それでもそこに何の因果応報もなく、神の意思はまるでランダムなものなのであって、何もかも振り捨ててでも求めたものは結局得られない、その悲しみにこそ人間のドラマがあるのです。本作はその悲しみを神というSF的"設定"を使って巧みに描いた作品だと思います。

≪和訳≫UNIVERSE/David Kushner

「他の宇宙でなら、僕たちは一生続いただろう」と歌う切ない曲。

ちょうどテッド・チャン「不安は自由のめまい」(『息吹』収録)を読んでいたのでややマルチバース的な世界観で聴きました。

時々、もういなくなってしまった大切な人がまだ存在する別の宇宙(バース)を想像します。今の人生の状況が自分の選択によるのかどうかにかかわらず、誰しも「もしあの時違う選択肢を選んでいたら、この苦しみは無かったかもしれない」という後悔を持っていて、だからこそ「叶わなかったifの物語」が「今」と同時にどこかに存在してるかもしれないマルチバースという概念に惹かれるのだと思います。

 

 

Oh, my love

Hear me now

You′re in my blood

You put me into the ground

Moving on

Tears on fire

Burn me like the California sun

 

There's a gravity pulling at our hearts

There′s a light that's cutting through the darkness

We're the rose that never fell apart

Baby, we could last a lifetime

 

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

 

Oh, my love

Where′re you now?

We′ve become

Ghosts that roam in this town

Let this rust

Let this live

Or should we run

From all of the sins we commit?

 

There's a gravity pulling at our hearts

There′s a light that's cutting through the darkness

We′re the rose that never fell apart

Baby, we could last a lifetime

 

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

 

There's a gravity pulling at our hearts

There′s a light that's cutting through the darkness

We're the rose that never fell apart

Baby, we could last a lifetime

 

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

In another universe, oh-oh, ooh-oh

Baby, we could last a lifetime

 

There′s a gravity pulling at our hearts

There′s a light that's cutting through the darkness

We′re the rose that never fell apart

Baby, we could last a lifetime

 

愛する人

これを聞いてくれ

君の存在は僕の血管に流れていて

僕を地上に縛りつけている

 

業火の苦しみに涙を流しているけど

やるしかない

カリフォルニアの太陽みたいに僕を焼き尽くしてくれ

 

僕らの心を惹きつける引力が存在してる

暗闇を切り裂いて照らし出す光がある

僕らは散らない薔薇

他の宇宙なら、僕たちの愛は一生続いただろう

他の宇宙でならば

 

愛する人

どこにいるんだ?

僕らはこの街を彷徨う幽霊になってしまった

錆びつくまでこの現実を

このままにしておこう

それとも僕らの犯した全ての罪から逃げ続けなきゃならないのか?

 

僕らの心を惹きつける引力が存在してる

暗闇を切り裂いて照らし出す光がある

僕らは散らない薔薇

他の宇宙なら、僕たちの愛は一生続いただろう

他の宇宙でならば

≪和訳≫BURIED AT SEA/David Kushner

DICHOTOMYマジで良いですわ。

BURIED AT SEA和訳です。

You′re wearing my halo, Heaven's divide

You′re fooling the angels with your sweet eyes

You're preaching a fable of the innocent one

From oath to betrayal, look what you've done

 

If the waves call my name

Then I won′t go down alone

Way down we go, oh-ooh

 

Oh, darling, we′re buried at sea

Our fate rests down in the mystery

Dry bones sinking in the dead, dead water

While the earth grows darker, my dear (oh)

Oh, darling, we're buried at sea

Our sins lay cold in the depths beneath

Hell don′t need another lawless martyr

And the Lord don't barter, I fear (oh)

 

I suffered in silence, you ate from the vine

Oh, I′ll spill the truth and let the world decide

 

If the waves call my name

Then I won't go down alone

Way down we go, ooh

 

Oh, darling, we′re buried at sea

Our fate rests down in the mystery

Dry bones sinking in the dead, dead water

While the earth grows darker, my dear (oh)

Oh, darling, we're buried at sea

Our sins lay cold in the depths beneath

Hell don't need another lawless martyr

And the Lord don′t barter, I fear (oh)

 

It′s too late for your atonement

You found the box, but lost the key (help)

Honey, don't be so naïve

 

Oh, darling, we′re buried at sea

Our fate rests down in the mystery

Dry bones sinking in the dead, dead water

While the earth grows darker, my dear (oh)

Oh, darling, we're buried at sea

Our sins lay cold in the depths beneath

Hell don′t need another lawless martyr

And the Lord don't barter, I fear (oh, hey)

 

君は僕の光輪を纏っている

天国は分断される

君は優しい目つきで天使たちを騙して

罪のない人の寓話を説いている

誓いから裏切りまで

ほら、これが自分のしたことだろ

 

もし波が僕を招くなら

1人では降って行かない

行くなら君も一緒だ

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの運命は謎の中に憩っている

この世が暗くなるのとともに

乾いた骨は死水に沈んでいく

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの罪ははるか深みに冷たく沈んでいる

地獄にはもう無法者の殉教者はいらないし

神は等価交換はしない

 

僕は沈黙の中で苦しんだ

君は葡萄の木から取って食べた

真実を撒き散らしてしまうから

世界に決めさせよう

 

もし波が僕を招くなら

1人では降って行かない

行くなら君も一緒だ

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの運命は謎の中に憩っている

この世が暗くなるのとともに

乾いた骨は死水に沈んでいく

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの罪ははるか深みに冷たく沈んでいる

地獄にはもう無法者の殉教者はいらないし

神は等価交換はしない

 

贖罪するには遅すぎる

君は箱は見つけたけど鍵を失くした

世の中はそんなに甘くないよ

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの運命は謎の中に憩っている

この世が暗くなるのとともに

乾いた骨は死水に沈んでいく

 

ダーリン、僕らは水葬されていく

僕らの罪ははるか深みに冷たく沈んでいる

地獄にはもう無法者の殉教者はいらないし

神は等価交換はしない

≪和訳≫CALIFORNIA NIGHTS/David Kushner

"Daylight"のDavid Kushnerのアルバム"The Dichotomy"収録の"CALIFORNIA NIGHTS"が良かったので和訳してみました。

California nights

Praying all the time

Where do I belong?

How do I be strong?

Born into a fight

Staring at the sky

Scared of what's above

Oh what will I become?

 

Nothing's wrong

But it ain't right

What's this battle deep inside?

Oh. my eyes say it all

Oh

I see the dawn

There ain't no light

Momma, come and hold me light

‘Cause I don't think I'll survive

Oh

‘Cause I don't think I'll survive

Yeah

 

What am I inside?

A war that I can't find

I don't feel at home

Dead in the catacomb

I scream to God at night

Afraid that I just might

Be talking to myself

And living in my hell

 

Nothing's wrong

But it ain't right

What's this battle deep inside?

Oh. my eyes say it all

Oh

I see the dawn

There ain't no light

Momma. come and hold me tight

‘Cause I don't think I'll survive

Oh

‘Cause I don't think I'll survive

Yeah

 

Living takes

Silence roars

Is this fate?

Or something more?

 

Nothing's wrong

But it ain't right

What's this battle deep inside?

Oh. my eyes say it all

Oh

I see the dawn

There ain't no light

Momma, come and hold me light

‘Cause I don't think I'll survive

Oh

‘Cause I don't think I'll survive

Yeah

 

カリフォルニアの夜

いつも祈っている

僕の居場所はどこにある?

どうやって強くなればいい?と

争いの中に生まれ落ちて

空をじっと見つめている

空の上には何があるのか恐れながら

そこに行った時、僕は何になるのだろう?

 

何も悪いことはない

でも何かがおかしい

心の奥のこの葛藤は何だろう?

僕の目が全てを語っている

 

僕は夜明けを見るけれど

そこに光はない

ママ、僕を抱きしめて

もうこれ以上生きられそうにないから

もうこれ以上生きられそうにないから

 

僕は何の中にいる?

理解できない戦いの中にいる

地下墓地の中で死んでいて

落ち着けやしない

夜になると僕は神に向かって叫ぶけれど

もしかしたら自分自身に叫んでいるだけなのかもしれない、

僕は地獄にいるのかもしれないと

恐れている

 

何も悪いことはない

でも何かがおかしい

心の奥のこの葛藤は何だろう?

僕の目が全てを語っている

 

僕は夜明けを見るけれど

そこに光はない

ママ、僕を抱きしめて

もうこれ以上生きられそうにないから

もうこれ以上生きられそうにないから

 

人生は容赦なく奪う

静寂がわめき立てている

これは運命なのか?

それとももっと他の何かなのか?

 

何も悪いことはない

でも何かがおかしい

心の奥のこの葛藤は何だろう?

僕の目が全てを語っている

 

僕は夜明けを見るけれど

そこに光はない

ママ、僕を抱きしめて

もうこれ以上生きられそうにないから

もうこれ以上生きられそうにないから

身も蓋もなさのあたたかさ/ドーキンス『利己的な遺伝子』

クリスチャン用語でいうところのいわゆる"躓き"をやっちまって、こける!と思ったらそこは断崖絶壁で、奈落の底に落ちて血はドバドバ体はズタボロなもののなんか生きてはいて、そしてこれからも生きていかなくちゃいけなくて、いま奈落の底で野菜育ててます、みたいな感じのメンタリティで生きてます。死の谷の影のほのぼの菜園カルティベート生活(?)。

さて、『利己的な遺伝子』超古典的名著なのですが読んだことなかったので奈落の底からチャレンジしてみました。これめっちゃ人間観・生命観にパラダイムシフト起こしてくる!

序盤から「生物個体は遺伝子の乗り物(ヴィークル)」っていう本書の最大のメッセージを大胆に打ち出してくるんですけど、最初の時点でカッ飛ばしてますね。しかし原始のスープから自己複製子がどんどん今の「生命」に近くなっていく過程やその他動物行動の遺伝子レベルでの自然淘汰を元とする説明はめちゃくちゃわかりやすくて納得。

正直今まで進化論とか自然淘汰のこと勘違いしてたわ。生物は別に「生存のためにこう進化してやろう、ああ進化してやろう」とか意図して進化したわけじゃなくて、ドーキンス先生の説明によれば、遺伝子プールで繁栄できるような遺伝子が「ただ数が多かっただけ」ということなんですね。遺伝子の伝達、つまり生殖-副次的には生殖可能年齢までの個体の生存-に不利な形質を発現させる遺伝子を持った個体は子孫を残さないまま死んじゃうので、そこで遺伝子の伝播が途絶える、これが自然淘汰だということなんですね。オモロー!

全編を通してドーキンス先生の語り口は結構皮肉っぽく、特に宗教的な意味で反論してくる人とかのこと結構馬鹿にしていて痛快です。(笑)

あと勉強不足だったのですが「ミーム」ってドーキンス先生が提唱した言葉だったのね。今までミームのことを≒スペースキャットみたいなネットミームだと思ってました。(笑)浅くてすみませんでした。(誰に謝ってるのかわからないけどとにかく謝りたい(笑))

遺伝子というのはヴィークルたる生物個体に乗って自己のコピーを増やして伝播していくものなんですけど、そういった伝播の動きをするものは必ずしも遺伝子だけではなく、「ミーム」ってのがあると。「ミーム」は人間の脳の中にポップアップするあらゆる概念のことなんですけど、概念か言葉や何かに乗って伝達され、他人の脳にも自己のコピーを作って伝播していく、つまりこれって遺伝子と相似じゃん、ってことなんですね〜。

ドーキンス先生にかかればろくろの回し方もアーチの建築技法も神の概念も地獄の概念もぜーんぶミーム!(笑)こういうこと言われたら信仰のある人たちはそりゃ怒るでしょうね(笑)。

今まで創造論と進化論の対立って「人間の起源をどう捉えるべきなのか」というところにあると思ってたんですけど、『利己的な遺伝子』を読んで、聖書的な創造論と進化論は全然別の次元の話してんだな、というのがよくわかりました。進化論って、生物学的に「生命がどう発生してきたのか」をいろんなエビデンスをもとに類推してる"""仮説"""であって、創造論って"""仮説"""ではないんだからその土俵に載せて対置すべきじゃないし(エビデンスがないんだから負けるに決まってるじゃん)、それやっちゃう人ってアホだな〜と思ったわ。でもそれをやっちゃうのって多分進化論のことよく知らないからなんだよね〜。勉強すれば「次元の違う話してる」というのがわかるはずなんですけど。

今の個人的な着地点としては、「大昔のことだから実際生命がどう発生したのかはわからないけど、自然淘汰説は説得力のある仮説として認める。ただし、自分という個体を見た時に、「人間たる自分は神に作られた」というマインドセットを持ち、謙虚な姿勢や、より良い生き方・自分にフィットする生き方を希求することは、それはそれで自分にとって有用」というあたりです。『聖書の読み方』の大貫先生はもっと賢いボキャブラリーで多分そんな感じのこと言ってた。

進化論と創造論は対立するものとして捉えないほうがうまくいくし、まともな思考力をもってすれば割と難なくそうできるんだから、むしろ神概念を「ミームだ」と言われることに反発したほうがいいんじゃないかしら、信仰のある人たち。

で、ドーキンス先生的な生命観でいくと、私たちは「遺伝子の生存戦略プログラム」に動かされる「生存機械=ヴィークル」にすぎないんですね。ドーキンス先生の生命観は身も蓋も無いんですが、遺伝子の生存戦略の結果、デカい脳と「意識」を持つに至り、他の動物(生存機械)とは一線を画すように思われる人間も、別にご大層な『生きる意味』とかミッションを背負わされてるわけではないんだ、というところにある意味あったかさを感じるんですね。だって、別に生まれる前に「この世に生を享けて〇〇を成し遂げたいです」って頼んだわけでもないのに、人生にミッションとか目的があったらしんどいじゃんね。我ら人間たち、ただ訳もわからず利己的な遺伝子生存戦略の結果生まれ落ちて来て、利己的な遺伝子にプログラムされて生きてるのだ、「ただそこに存在しちゃっただけ」なのだ、という生命観が、世界のどこかで救いになることもあると思うな〜。それは実はこの死の谷の影の家庭菜園だったりもすると思います。