墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

2021-01-01から1年間の記事一覧

もはや時代劇かもね/『グリース』

カタカナで認識してたから、アメリカの話なのはわかってたけどどっかでギリシャが絡んでくるものと思ってたよね。全然違ったわ。スペルが違ったわ。1ミリもギリシャなかったわ。トラボルタは「老けた高校生だなあ」と思ってたけど、オリヴィア・ニュートン=…

実は保険調査員ドラマでした/『殺人者』

ずっと観たかったバートランカスターデビュー作『殺人者』を鑑賞。若かりしバートの荒くれ者の脂っぽさと美青年感が両方出ていてバートウォッチャー的にはかなり良いです。そしてヒロインのエヴァ・ガードナーが輝かんばかりのファム・ファタールで、まあよ…

娯楽に全振り!女装が雑すぎる/『真紅の盗賊』

バートランカスターのプロモーションビデオか?っていうスターありき映画です。バートのアクション以外にはあんまり期待してませんでしたが、ちゃんと海でロケしてるっぽいし、脇役のニック・クラヴァットも演技がうまくていいキャラ出してるし、一瞬ですが…

タイトルしか勝たん/『サタデーナイトフィーバー』

ええ〜…?もっと全編踊りまくってマツケンサンバ並みのフィーバー!ジャーン!終わり!みたいなイメージだったのに、親友は死ぬわ、自分に想いを寄せる女の子がヤケになって輪姦されるのを見て軽蔑するわ、テーマは「10代の葛藤」みたいな感じだったの……?と…

マルチェロ・マストロヤンニはジェフ・ゴールドブラムと同じ匂いがする/『昨日、今日、明日』

たしかにかっこいいしセクシーなんだけどなんかそこはかとなく常にアホをひとつまみふりかけられているマルチェロ・マストロヤンニ。第三エピソード終盤で、ソフィアの爆裂セクシーストリップをぶりっ子ポーズでガン見しているシーンはさすがにバカでした。…

ロブって普通に良い奴じゃん/『TENET』

出た物理学時間軸こねくり回しノーラン節。最初本当に理解できませんでしたがなんか面白かったです。ベトナムで自殺を止めるやつは、逆行してない方の自殺を止めるんだと思ったんだけど逆行した方の自殺を逆行したキャットが止めるっていうことね。理解。ロ…

そのブロマンスはちょっと脂多すぎてキツい/『ワンスアポンアタイムインハリウッド』

タランティーノ『ワンスアポンアタイムインハリウッド』を観た。まず「史実ねじ曲げちゃった!?」が一番の感想です。あとブルース・リーをあからさまにコケにするのはちょっとPC的に違和感……と思いました。ネットで評も少し読みましたがいきなり「ミソジニ…

それがアイリッシュのハードボイルドなのか?/『ジャック・テイラー』

イアン・グレン主演ドラマ『ジャック・テイラー』を観た。アイルランドのゴールウェイという地方都市で私立探偵をやっているジャック・テイラーが主人公のクライムサスペンスなのだが、ハードボイルドと言われている割になんだか主人公はしっかりしていなく…

バズ節炸裂!アメリカン・ドリームとギラついたレオ様/『華麗なるギャッツビー』

バズ・ラーマン監督レオ様主演の『華麗なるギャッツビー』を観た。狂騒の20年代に、ある意味バズの騒々しい画面作りは合ってるのかもしれない……?かと言ってそこまでバズらしさを好きにはなれないのですが。(笑)キャスティングとかは良いし嫌いでもないけど…

どぎつくなくエロくない、女が抱いても良いよいこのセクシー:良くも悪くもベビーピンクのオシャンティーになるしかないのか/『ランジェリーインシネマ』

山崎まどか『ランジェリーインシネマ』を読んだ。もとはピーチジョンのサイトに連載していたコラムをまとめたものらしい。テーマがオシャレかつ興味深いし変なPRくささもなくて良い。中身は今までチェックしてなかった「バターフィールド8」とか紹介されてて…

詩的宇宙・宇宙的詩世界『銀河の片隅で科学夜話』

この世の仕組みって不思議だよね。詩的かつ壮大だけど軽妙なエピソードで綴る22夜一夜物語。表紙も挿絵もめっちゃ良い。好きなのは「世界の中心にすまう闇」と「エヴェレット博士の無限分岐宇宙」、「ペルシャとトルコと奴隷貴族」あたりです。最初は冷遇さ…

佳苗を「ケア」で読み解く/『毒婦たち。東電OLと木嶋佳苗のあいだ』

今、世の中的にも信田さよ子が来てるんですけど、あんまり意識せず読んでみたら面白かった。対談の中では片鱗しか触れられてないけど、佳苗の手記とか供述とかのしっかりとしていながら当たり前のように対価としてバンバン人間を殺していく(花畑風味あり)感…

何もはっきりとは言わないままでいて/『ラスト・ストーリーズ』

アイルランドの作家ウィリアム・トレヴァーの短編10篇を集めた作品集。どれもはっきりと「答え合わせ」をしないけれど、かと言って物語構造がぼんやりしているわけでもない、ジャンクさとは程遠い繊細な物語だった。中でも「冬の牧歌」が好きになった。ラス…

モノと物語/『アンティークは語る』

マーク・アラム『アンティークは語る』を読んだ。著者はBBC「アンティーク・ロードショー」でプレゼンターを務めていた人らしい。(本書を読む限り、イギリスの「なんでも鑑定団」みたいな番組と思われる。観てみたい。)有名なコレクションアイテムの紹介から…

空っぽな手の奇蹟だ/『田舎司祭の日記』

バルタザールのノリにいまいちハマりきれなかったのですが、こっちは好きだった。特にサントラ。予告の時点ではてっきり司祭とシャンタルが禁断の恋に落ちて「聖職なのに村の娘に手を出しやがって」的なスキャンダルになって司祭の地位から追い落とされるみ…

主人公のエイドリアンブロディ感/『バビロン・ベルリン』

『バビロン・ベルリン』が配信で観られるようになったのでまたS1から観ています。安定の面白さと衣装・美術の良さ…………。ジャーマン・ジャズ・エイジここに再現さる。しょうもないですけど前から主人公がエイドリアンブロディに思えてしょうがないです。あと…

ウル・コーマはグルジア語/『The city&the city』(ドラマ)

かつてアイリーン・アドラーだったララ・パラヴァー様に期待してたんですが、SFドラマだったらどちらかというと「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームス」の「真生活」の方が輝いてました。「べジェルとウル・コーマは隣接する都市国家だが互…

最後のくちづけを、そして愛した女の血の雨のふる/ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』

ヴィスコンティの映画をだいぶ前に先に観て、今回原作を読みました。ヴィスコンティは勝手に映画化して違うタイトルつけてたから、デビュー作なのに公開禁止とかになってたらしいです。地に足のつかない根無草の男・フランクが、魅力的な人妻コーラに出会っ…

むしろカレーニンをもっと見たい/『アンナ・カレーニナ』

ほとんどのシーンが文字通りの劇場とそこに挿入された邸などの空間で展開する、歌わないミュージカル?舞台演劇?的映画。画作りは面白いし綺麗だけどなんでそこ劇場にした?っていう無理やり感あるシーン(競馬とか)も多かったです。美術チーム大変だっただ…

私たち自身の痛みから気を逸らすための装置としての「どこか遠いどこか」/『ムスリム女性に救援は必要か』

オリエンタリズム・ポストコロニアリズムを齧った者なら知的好奇心をめちゃくちゃ刺激される一冊。自分の中のオリエンタリズムを自覚させられます!!名作『私はヌジューム、10歳で離婚した』を観る目が変わります。著者は、西欧の人々が普遍的な倫理コード…

エヴァ様の魅力炸裂/『ダークシャドウ』

“Curse you”とか言ってるわ、シャンデリア落とすわ、ティム、なにげにオペラ座の怪人的要素を入れようとしたな??とにかくエヴァグリーン様が魔女という完全にそれな設定でアンジェリークの魅力がやばい。エヴァグリーン様があんな媚態で迫ってきたらそら誘…

モモアマンはカールドロゴだからその世界で王になったらいかんタイプ/『アクアマン』

なんかニコールの息子がモモアマンなのも無理あるしパトリックウィルソンがモモアマンの弟なのもかなり無理あるぞ。ニコールは元々地毛がブロンドなのもあるけど、デナーリス的プラチナブロンドウィッグをかぶってビジュアル的にありになれちゃう女なの本当…

こんなねちこいイタリア人少年いたのか!最悪!/『青い体験』

『イノセント』からのラウラアントネッリ繋がりで『青い体験』を観た。とにかく性加害の連続でめちゃくちゃ不快だった…………。昔の男どもこんなので抜いてたの!?あまつさえイタリア人が!?これよりエマニエル夫人でオナニーする方がなんぼか健全だと思う(エ…

オールスターだからこそキャスティングの妙が活きる/『大空港』

ただのバートウォッチングと思って観ていたら結構ハラハラして面白かった。というか公開当時はめちゃくちゃヒットしてたのか……。「あらゆるフライトパニック者の祖」らしいです。バートウォッチングとしてもいいバートがいっぱい見られて良かったです(バート…

「3つ数えろ」よりこっちが「The Big Sleep」じゃん/『イカリエ-XB1』

『2001年宇宙の旅』や『スタートレック』など錚々たるスペースムービーに影響を与えたと言われるいにしえのチェコ共産SF。あーなんとなくわかるような分からんような。というかそもそも『2001年宇宙の旅』を観たのがだいぶ前だしあんまり真剣に観ていないん…

抑圧者としての自分がじりじりと炙り出されつつも、物語の奔流に圧倒される読書体験/『パチンコ』

なんという没入感……あっという間に読んでしまいました。なんというか、もっと日本社会への批判的な目線が入っても当たり前なのだが、ものすごく慎重に日本人や日本社会を責めず悪者にせずただありのままに日本の醜い部分を含めて彼らの生きていた空間を昭和…

コミカルでライトでアクセント的に脇役が死ぬよね/『ムーンライズ・キングダム』

ウェス映画、脇役の死にようがめちゃくちゃコミカルなことが気になるんだよね。今回は犬のスヌーピーでした。(グランド・ブタペスト・ホテルの脱獄のシーンで地下ポーカーしてた奴らをババーッ!と殺すところで「は?」と思ったのを覚えてます。)話の展開上…

ずっとボギーの良さはわからないまま/『3つ数えろ』

『3つ数えろ』を観た。ハンフリー・ボガートとローレン・バッコール夫妻が主演のフィリップ・マーロウものなのだがとにかく話の筋がわかりづらい。ガイガーとリーガンが全然画面に出てこないから登場人物が何の話してるのか全くわからないし…。最近の異様に…

有機的な断片たち/『盆栽/木々の私生活』

最近本にも映画にも集中力が続かない上、平日は少ししか読者に宛てられない労働者なのでこういった断片的で語りが行ったり来たりする物語に対してこっちの読み方が悪かった。嗚呼労働者の悲哀よ。最近珍しく集中できたのは「パチンコ」で、本当にどうにもな…

あの子は嫌いよ。あなたを苦しめるから/『イノセント』

ヴィスコンティの遺作『イノセント』を観た。コスチュームプレイここに極まれりすぎて若干胸焼けしました。もう四捨五入したらアラサーだから霜降りの脂乗ってる肉とか沢山食べられないの……。『山猫』は長いけどシチリアの青い空も出てくるしもうちょっとカ…