墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

気持ちはわかるけどそのテープは捨てちゃうなよ!!/『ガッジョ・ディーロ』

ずっと観たかった。歌と踊りこそ人生。


フランス人の若者ステファンは、父が愛聴した伝説のジプシー歌手ノラ・ルカに会うためにはるばるルーマニアにやってくる。言葉も通じない中、やたらと感情表現が大げさ(とてもジプシーっぽい)な村の老人イシドールに気に入られ、イシドールの家に居候することになる。「泥棒に決まってる!」とステファンを追い出そうとする村の面々に向かってイシドールは「この若者は神の使いだ!!」ってそんな無茶な。ただのフランス人だよ。実はイシドールの家族はというと長男は刑務所暮らし、次男は大怪我していて寂しかったらしい。

イシドールはバイオリンの名手。ステファンもだんだん村に溶け込み、少しフランス語がわかるサビーナと仲良くなる。地元のドン(?)の娘の結婚式にジプシーたちが楽団として呼ばれたり、ノラ・ルカを知る歌手を尋ねるも彼が死んでしまっていたので墓で追悼のセッションをしたり、ブカレストに出てイシドールが若い女の子を引っ掛けようとしたり…ジプシー達とともに日常を過ごす中、ステファンはジプシー達の音楽を次々と録音していく。

ある日、イシドールの長男アドリアーニが釈放されて村に帰ってくる。しかし、酒場でルーマニア人たちを挑発し、争いになった結果村は焼かれ、アドリアーニは焼死してしまう。森で愛を深めていて村にいなかったステファンとサビーナは、アドリアーニを見つけて嘆き悲しむ。

ラストシーン。ステファンは、録音ではジプシーたちの歌の素晴らしさをうつしとることはできないことに気づいてテープを壊し、テープの墓を作る。象徴的なラストシーンで映画としてはいい…んだけど、今は亡きレジェンドの音源って、当時の音質ガサガサの録音からですらその凄みの片鱗が感じられるので「あ〜〜〜〜そのテープは捨てないで〜〜〜」と思ってしまった。


結局探し求めていたノラ・ルカには辿り着けないのだが、ノラ・ルカのことをいくら聞いてもイシドールにはぐらかされてばっかりでちょっとかわいそうながらも笑ってしまった。