ブレッソン「バルタザールどこへ行く」を観た。
あらすじが難しすぎる。省略。
主人公はロバのバルタザール。でも変な擬人化がされていなくて、バルタザールの気持ちは誰にもわからない。「マリーとバルタザールは両思いなんだぜ」というセリフもあるけどちょっと違う。
子ロバだったバルタザールがペットとして買われ、譲り渡され、使役され、売られ、その中でさんざんひっぱたかれ、殴られ、鞭うたれ……バルタザールはひたすら澄んだ瞳でただとまったり歩いたりしている。
バルタザールの周りをとりまく人間たちは、それぞれ勝手な事情と勝手な思惑で生きている。それらのエピソードは、連続しているようでどこか断片的である。
最後に羊の群れに囲まれながら一生を終えるとき、はじめてバルタザールは人との関係性から離れたものとして提示される。ここに至って観客は、このちいさなロバの一生がいかに他人によって左右されてきたかを知るが、しかしそこにはあきらかな喜びも悲しみもなく、バルタザールにとってはただ淡々と進んできたことに気づかされるのである。