墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

まさにアニメで綴る詩/『アニメの詩人 ノルシュテイン』

児島宏子『アニメの詩人 ノルシュテイン』を読んだ。

この本を手に取るのはすでにノルシュテイン・ファンの方だと思いますが、「ノルシュテイン短編集」を観ていないと本書を読んでも意味がわからないと思うので、ノルシュテイン作品を未見の方は先にアニメの方を味わってください。


著者の児島さんは、ノルシュテイン監督来日時にはほぼ常に通訳を務められているらしく、ノルシュテインの制作のために日本語資料を訳して送るなど、ノルシュテインとは長く深い交流をされているらしい。そんな途方もない経験をする人、日本人でいるんだ…。児島さんとユーラ(ノルシュテインの愛称)の出会い、ノルシュテインとのやりとりやエピソードに加えて、各作品について児島さんが一つ一つ解説してくれる。裏話に感心することや「あ〜そうそう」となることが山ほどあるんだけど、ユーラ的にウサギの目と『話の話』のオオカミの目にそんなにこだわりがあったと言われても「ほんまか!?」と言わざるを得ない。少なくとも私には全く感じ取れなかった。オオカミはともかく、特にウサギはちょっと不気味だな…とすら思っていた(笑)


最も印象に残ったのは、『霧の中のハリネズミ』のラストシーンの裏話だ。そのシーンはヨージックが「白馬さん、どうしているかな…」と思い浮かべるというものだが、ノルシュテイン自身は本当はフクロウが「ホッホー」という自分の鳴き声のこだまを聴いているシーンにしたかったらしい。これには児島さんもびっくりで「今のシーンの方が余韻があっていいよ!!!」とノルシュテインに言っている。(児島さんにとても同意です。)しかしノルシュテインは「自分の好きなものを見つけるというのが大事だから…」というようなことを言っていたらしい。そういうテーマだったのか…。


もちろんノルシュテイン作品は何度も見返したくなるものばかりだが、本書を読んで背景を知ったうえで改めて見返したくなった。