墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

佳苗を「ケア」で読み解く/『毒婦たち。東電OLと木嶋佳苗のあいだ』

今、世の中的にも信田さよ子が来てるんですけど、あんまり意識せず読んでみたら面白かった。対談の中では片鱗しか触れられてないけど、佳苗の手記とか供述とかのしっかりとしていながら当たり前のように対価としてバンバン人間を殺していく(花畑風味あり)感マジでヤバいな!!!


上野千鶴子はしゃべりまくりで「男なんていっぺん滅亡しちゃえばいいのよ〜」みたいなテンションなのはいつものこととして(笑)、信田さよ子は「ケア」という観点から佳苗を分析していて面白かった。つまり、男たちは佳苗のセックスの虜になっていたんではなくて、手料理とか、キモがらずに優しくしてくれるとかという母のようなケアに熱中していたのではないかという読み。で、佳苗の提供するセックスはケアの一環なのであって、個々の男にとっては悪い女/ヤリマンとするセックスではなく、佳苗が自分に好意を持ってくれているからこその、自分だけに向けられる慎ましい性欲の発露(※文が長くなってわかりにくいですが、おっさんの性欲の発露ではなく佳苗の性欲)としてのものであったと。


あと信田さよ子が男のアカンところさんざん述べたうえで「だから、これからの世代の男の子って信じてみてもいいのかなと思って。」と言って他の2人に「ええええ〜〜〜!?!?どっからその発想が出たの???」みたいな反応されるところも面白かった。私も最初「信田さよ子なんでその流れでその結論なの??(笑)」と思ったので。


この本はあくまで日本の実在の毒婦たちを扱っているので、表象としての幻想的なファム・ファタールとは事情が違うのですが、日本の毒婦像ってなんぞや?と考えたり、角田美代子(角田事件って通称「尼崎事件」なんだね。流石の尼崎にも、後にも先にも角田ほどのエゲツなさの逸材はもはや存在しないというインパクトを感じられる……。本書では佳苗とは別ベクトルの女として取り上げられています)や木嶋佳苗みたいな女を社会がどう取り扱うか?ということは面白いなあと思ったり。


この本の前段階として北原みのりが佳苗をとにかく追ったルポがあるらしいので、そっちも読みたいです。