墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

実は保険調査員ドラマでした/『殺人者』

ずっと観たかったバートランカスターデビュー作『殺人者』を鑑賞。若かりしバートの荒くれ者の脂っぽさと美青年感が両方出ていてバートウォッチャー的にはかなり良いです。そしてヒロインのエヴァ・ガードナーが輝かんばかりのファム・ファタールで、まあよくこのキャスティングしてくれたわね。ただ全部観たら明らかに主人公は保険調査員のリアダン(エドモンド・オブライエン)だったのにタイトルクレジットはババーンと「バート・ランカスター&エヴァ・ガードナー」で出ててそれでいいの!?と思ったり。(大御所を最後にクレジットするのはわかるんだけども。)


最後の「実はキティはコルファクスと共謀してスウェードを陥れた」という展開はあんまり予想できなかったです。というかあんな美人で可愛らしいエヴァ様にチューされたら万人が騙されて金を持ち逃げする気持ちになるからしょうがないわよ……。粛々と死んでいったスウェードが不憫すぎる。

そして実はちゃんとした保険調査員謎解きドラマなのにリアダンの前情報が無さすぎて不憫。ストーリーの中ではちゃんと主人公主人公してるのに……。リアダン普通にいいキャラでした。

娯楽に全振り!女装が雑すぎる/『真紅の盗賊』

バートランカスターのプロモーションビデオか?っていうスターありき映画です。バートのアクション以外にはあんまり期待してませんでしたが、ちゃんと海でロケしてるっぽいし、脇役のニック・クラヴァットも演技がうまくていいキャラ出してるし、一瞬ですがバートの女装シーン(!!!!!!)まで出てきて意外とお得感がありました。

女装は全然似合ってなくて、まず身体がゴツすぎる(ゴツさを衣装などでカモフラージュしようという気が全くない)。そして髪も取ってつけたような縦ロール。メイクもあんまりしてないというお粗末な女装でしたが、かなり笑えました。全部盛りの娯楽大作だからってスターに何させてもいいと思ってんのか。(笑) 馬車というか山車というかそういうやつに乗って登場するやいなや雑な女装で投げキッス。妙にくねくねした身のこなし。揺れる縦ロール。これまた雑な両サイドの女装に手を取られて降車。ゆっくりと一歩ずつ近づいてくるヒラヒラスカートのゴツい奴。なんのギャグなんだよ!


 若い頃のバートは現代のハイ・ドラァグ・テクノロジーで女装したらかなり可能性を感じるのではないかと思いましたが、ただ女装が似合うのって坂東玉三郎とか地顔が薄い人だとは思うので、バートみたいな濃い顔の人は素質があんまりないかも知れない。


一瞬の女装はともかく、男スタイルでは袖がふんわりした白シャツにピチピチのズボンの海賊スタイルとか、男爵のふりして夜会に出る時のピチピチのズボンとアビとかをよく着こなしている上、上裸が適度にむさくて良かったです。というか上が何であろうと基本ズボンピチピチ。何を狙ってるのか?


ストーリーはプロモーションビデオなりなのであまり重要ではありませんが、海賊船のキャプテンであるバートがなんやかんやあって美女と出会い、紆余曲折あって無事最後はチューで締まります。今どきの作品ではやはりド直球の異性愛礼賛、チューで大団円ってつまらないものになってしまってますが、こういうハリウッドゴールデンエイジのお約束って一周回ってやっぱりパワーあるなあと思います。量産されるってことはそれだけみんな好きってことですから。むしろこの時代のハリウッドにそういうのを期待しているので、お約束がなかったら物足りないかも。この時代のお約束をしっかり踏まえるからこそ、こうやって遊びの部分で女装とか好き勝手できる多様性もあるのかも知れません。しかしその女装はもうちょっとやる気出せよ。

タイトルしか勝たん/『サタデーナイトフィーバー』

ええ〜…?もっと全編踊りまくってマツケンサンバ並みのフィーバー!ジャーン!終わり!みたいなイメージだったのに、親友は死ぬわ、自分に想いを寄せる女の子がヤケになって輪姦されるのを見て軽蔑するわ、テーマは「10代の葛藤」みたいな感じだったの……?という読後感だった。こういう一見アホそう&時代的にポリコレ的ひねりを気にしてない映画では順当にヒロインとくっついて欲しいんですけど!!!!というかステイン・アライヴがサントラだったのを冒頭で流れて初めて知ったし、ステイン・アライヴはやっぱサントラ中一番良い曲だったと思います。


純粋にダンスコンテスト優勝を目指してイェーイ!にフォーカスしてくれたら良かったんですけど、コンテストで優勝してもヤラセで納得できないくだりから加速度的に展開がめちゃくちゃ暗くなり、話がとっ散らかりはじめてよくわかんなかった……。観る前に思ってたより深いテーマを描こうとしてたので、サムネイルのトラボルタの決めポーズのフォルムのノリのバカさ加減とのギャップで戸惑ってしまいました。

あと良くなかったのはダンスコンテストでトニーが踊る曲の選曲!なんか曲にしまりがなくポワワーンとしてて、もっとノリノリの曲で踊ったら良かったんじゃない!?と思った。演出上、プエルトリコ組をめちゃくちゃ盛り上げて差を際立たせる必要があるのはわかるけど、あまりに主役カップルの踊りがぼんやりしてて本気出してない感が出ててシーンとして「それが主役の見せ場〜…?」って感じだったので…。


そして気になるキャラはトニーに想いを寄せるアネット。あのね………………………………「恋に恋するお年頃」ってレベルじゃねえべ!!!!!露骨にセックスに執着すな!!!!道端でコンドーム出して誘うな!!!!!!なんなんだこのキャラクター造形は!!!!!絶対男が考えただろ!!!!と思いました。しかもヤケを起こしてトニーの友達にデレデレして、最後はトニー(好きな人)が見てる中で車で輪姦されて泣いちゃってトニーに軽蔑されるという………。ちょっと不憫すぎへん?「もっと自分を大事にしろ!」と言いたいわ。トニーも止めろよお……。


とにかくタイトルの語呂とステイン・アライヴはめちゃくちゃ良かったですが、かなり「思ってたのと違うなあ」と思いました。

マルチェロ・マストロヤンニはジェフ・ゴールドブラムと同じ匂いがする/『昨日、今日、明日』

たしかにかっこいいしセクシーなんだけどなんかそこはかとなく常にアホをひとつまみふりかけられているマルチェロ・マストロヤンニ。第三エピソード終盤で、ソフィアの爆裂セクシーストリップをぶりっ子ポーズでガン見しているシーンはさすがにバカでした。なんで興奮の表現がそのぶりっ子ポーズなんだよ。あと靴履いたままベッド乗るな。

一方ソフィアはブリンブリンの豊満な肉体を見事に見せまくっていました。

イタリア人の考えるラブコメって心底くだらなくて逆に笑える性のギャグとかが出てくるんですけど、今回も「逮捕されないために妊娠し続けよう!」のくだりは笑った。あと刑務所の外から受刑者に連絡するために「おい、歌ってくれ」って友達に頼んで「釈放を請願するよ〜」とかってカンタータにして歌ってもらうのとかイタリア人しか通用せんでしょ。

マストロヤンニはあんなに精気を抜かれてげっそりしてたのに刑務所に面会に来て「もう下の方もバッチリ復活したぜ」とか言い出すのマジでイタリア人で笑った。イタリア人のセックス観って独特ですよね。

ロブって普通に良い奴じゃん/『TENET』

出た物理学時間軸こねくり回しノーラン節。最初本当に理解できませんでしたがなんか面白かったです。


ベトナムで自殺を止めるやつは、逆行してない方の自殺を止めるんだと思ったんだけど逆行した方の自殺を逆行したキャットが止めるっていうことね。理解。


ロバートパティンソンはトワイライト時代は正直顔もそんなアメリカ人のティーンがキャーキャー言うほどか?と思ってたし大根役者だと思ってましたが普通に良い奴じゃん………。やっぱ顔塗りすぎで髭とか青くなってたから下手くそに見えてたのかな。クリステンもトワイライト後の方が囲み系スモーキーアイメイクのロックな感じになってて良いです。(チャーリーズエンジェルとか)

ベラの時はイメージ戦略的にフワフワ清楚ガールみたいなスタイルしかできなかったのでそれがめっちゃ嫌だったみたいですが、その後本人のかなりハードロックな性格をバンバン見せてくれてゴリゴリの金髪にしたりシャネルのアンバサダーになったりハイヒール脱いだりしてて最高です。ラドクリフしかり、一回お金稼ぎ終わったら好きな映画だけ出て自由にしてる人、いいね。

そのブロマンスはちょっと脂多すぎてキツい/『ワンスアポンアタイムインハリウッド』

タランティーノ『ワンスアポンアタイムインハリウッド』を観た。


まず「史実ねじ曲げちゃった!?」が一番の感想です。

あとブルース・リーをあからさまにコケにするのはちょっとPC的に違和感……と思いました。


ネットで評も少し読みましたがいきなり「ミソジニー批判はあたらない」とか書いてるブログがあってそのアンチフェミの熱量に引きました。いや普通にタランティーノはかなりミソジニスト臭するし、いろんな作品にミソジニー通底してると思うんですが………。作品性だけじゃなくて、ユマ・サーマンへの危険な運転強要とかもあったよね。そもそも西部劇をオマージュしてる時点で女をまともに出す気がないのは丸わかりだよね。


まあそれは置いといてレオ様もブラピもおっさんになりましたね。

もはや彼らも懐古される存在になりつつあり、レオ様も若かりし頃の美貌を失い…という現実とのオーバーラップもあるのかもしれません。(ただ2人とも大物すぎる、かつギラついたおっさんだから「親友以上妻未満」とか言われるとちょっとグロいが)

それがアイリッシュのハードボイルドなのか?/『ジャック・テイラー』

イアン・グレン主演ドラマ『ジャック・テイラー』を観た。

アイルランドのゴールウェイという地方都市で私立探偵をやっているジャック・テイラーが主人公のクライムサスペンスなのだが、ハードボイルドと言われている割になんだか主人公はしっかりしていなくて(本人もセリフで「ハードボイルドというよりハードフライドかな」と言ってる)、酒に飲まれてベロンベロンになるわ、気に入らない奴はすぐ殴るわ、あっさり殴り返されて道端に転がるわ、襲ってきた奴を殺そうと思ってないのに事故で殺しちゃうわ、しっかり証拠が揃ってないのに自分の推理だけで「テキトーな理由で早く引っ張れ」と警官に迫るわ、イアングレンの顔の良さに対してキャラクター造形になんかかっこ悪いところがある。


各話の殺人の謎解きも総じてイマイチだった。そして致命的な問題は、テイラーがローナンを失明させてたとか、視聴者が知らない情報をあたかも既出のように初出の回想シーンで出してくるとこ………。伏線になってないじゃん!としか言いようがない。


このドラマの良いところはイアングレンの顔が良いところ。あと、母親との微妙な関係を描いていて良かった。私は日本のテレビドラマの家族像に本当にうんざりしているので、日本のドラマ制作界隈にはこんな微妙な関係性のまま母が死んじゃうみたいな話を描き出せる力量は無いだろうなと思います。これ日本だったらお母さんが脳卒中になった時点でお涙頂戴になるのが見え見えだもん………。


6話まではケイトと微妙な関係を保ちつつ上手く相棒をやってたのに、7話からケイトのキャストが変更になってあからさまにテイラーとくっついたのが余計だった。降板なら死なして他の女性キャラクターを登場させるなりなんなり、やりようはあったはず。コーディでそれをやってしまったからケイトにはその手は使えなかったのか?ダウントンアビーでキャストが降板するたびに主役級キャラクターであろうが何であろうがしっかり殺して変なキャスト変更をさせなかったジュリアンフェローズの偉大さを思い知った。


イアングレン・ファンとしてはアル中のイアングレンとか上裸のイアングレンとか母親とお散歩するイアングレンとかが見られて良かったです。