墓場よりお送りいたします

ブン学、オン楽、映画のはなしなど

どぎつくなくエロくない、女が抱いても良いよいこのセクシー:良くも悪くもベビーピンクのオシャンティーになるしかないのか/『ランジェリーインシネマ』

山崎まどか『ランジェリーインシネマ』を読んだ。もとはピーチジョンのサイトに連載していたコラムをまとめたものらしい。テーマがオシャレかつ興味深いし変なPRくささもなくて良い。中身は今までチェックしてなかった「バターフィールド8」とか紹介されてて勉強になるし普通にしっかり映画の中の下着について考察されてて、スッと読めつつさらに興味を持てる良コラムが多かった。


文は好きなものの、なんせイラストが””””””””フワフワベビーピンクオシャンティー””””””””すぎる!!!!いやもちろんオシャレなことはいいことだし、このテーマだったらともすると変な性的消費エロ感を醸し出してしまうところをちゃんと回避しててクリーンな感じだしweb連載にはぴったりだと思うんだけど、なんかすべて牙が抜かれてしまっている………。最も残念なのが女優の顔が全然似てないこと………。既に見た映画も女優の顔が似てないが故に「ああ!この時のあのシーンね!」となりづらい。『つぐない』のキーラナイトレイも『プラダを着た悪魔』のアンハサウェイも『パーソナル・ショッパー』のクリステン・スチュワートも少なくともそんな顔ではなかった。このイラストの人の画風の独自の女の子に回収されてしまっていて、その女優特有の感じがイマイチ出てなくてもったいない………。


で、この本のビジュアル的な雰囲気がなぜこんな本屋に並んでてもポリティカルに問題なさそうで万人に害がなさそうな感じになったのか?女はいやらしい性欲をあけっぴろげにしてはいけないだからだ。女向けのエロには無理矢理犯すとか中出しとかそういう文字は踊ってない。(実際、そういうのを求めている女は少ないと思う。女はレイプカルチャーに染まってないから。でも、男性向けの過激な性表現を内面化してしまって「これがエロだ」と刷り込まれた結果、そういうのにムラムラ的反応をするという人はいると思う)


実際は、女はセクシーな女を見たい。女も女の体を見てムラムラするし性的ファンタジーを抱いているのだ。でもそういうことをあからさまに言うのはまだまだ家父長制規範に縛られた日本のような社会ではタブーだ。だからフワフワしたピンクと水彩の淡いオシャレさで包まないといけない。

私たちは強くてセクシーで、男の性欲に従順に屈服したりせずに自分からビッチになりにいく女像にエンパワメントされるが、私たちが魅力を感じるのはそれだけではない。私たちは私たち自身が女性の肉体を性的に消費する可能性を考えないといけない。男が女を性的消費する構図が氾濫する現状をさんざっぱら批判してきたしそれは消費する/されるのバランスが不均衡すぎるから完全に正当な批判なのだが、それとは違う女は→女のヘルシーな性的消費(健全なものになったらそれは「消費」ですらないのかも)の可能性はあるのか?


はらだありさが服飾テーマのコラムで書いてましたが、下着には3つの側面があって「衛生用品」「布製の衣服」「セックスの時に動員されるメンバー」だと。本作『ランジェリーインシネマ』では、しっかりと「セックスの時に動員されるメンバー」の面を認めず、あえてそこを無視しに行き、さらにピンクのフワフワで包んだ感じでした。

などと色々書きましたが下着会社母体のメディアに掲載していた書き物として、無駄なエロを持ち込まない気遣いは非常に「まっとう」だと思います。アツギとは大違い。えらい。


この本の後にキングコングセオリーを読んだのでキングコングセオリーにつられてこういうことを考えていますが、私の普段の態度としてはこっちが本業だぜ!!!!